大腸内視鏡診断支援用AI技術

大腸がんは、日本人女性のがん死亡原因の1位、男性で3位と近年増加傾向にあり、効果的な対策が求められている。大腸内視鏡で早期がんや前がん病変を切除すると、大腸がんによる死亡を大幅に減らせることが明らかになっている。しかし、内視鏡検査の際に医師は、切除する必要のある腫瘍性ポリープと切除する必要がない非腫瘍性ポリープを的確に判別する必要があった。
このような目的で、昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英教授らは、名古屋大学大学院の森健策教授ら、およびサイバネットシステム株式会社と連携して、内視鏡画像を解析して、医師による診断を補助するAIの開発を進めてきた。
工藤教授らの開発したソフトウェア「EndoBRAIN®」は、AIの一種であるサポートベクターマシンという機械学習手法に基づいている。約6万枚の内視鏡画像を学習した「EndoBRAIN®」は、それに基づいて、内視鏡画像の病変が腫瘍であるか非腫瘍であるかを推測し、その可能性とともに提示する。
薬機法承認を得るためにAMEDの支援を受けた工藤教授らは、5つの医療施設(昭和大学横浜市北部病院、国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、東京医科歯科大学医学部附属病院、静岡県立静岡がんセンター)でEndoBRAIN®の性能評価試験を行い、この技術が、非専門医より有意に優れていることを実証した。EndoBRAIN®は、専門医に匹敵する正診率98%、感度97%の精度で腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを識別した。これの結果を受け、EndoBRAIN®は、クラスIII・高度管理医療機器として2018年12月6日に医薬品医療機器等法に基づく承認を取得した。
EndoBRAIN®を内視鏡検査中に使用することで、医師を支援し、その診断精度が向上することが期待される。